演じられる能と狂言の演目解説を掲載致します

葵 上(あおいのうえ) 喜多流 能

左大臣の息女・葵上は原因不明の病に侵され、様々な薬や祈祷も効き目がないので、朱雀院の臣下(ワキツレ)は、梓の弓の弦を鳴らして占いをする照日の巫女(シテツレ)と云う祈とう師を頼む。照日の巫女が弓の弦を鳴らすと女性(前シテ)が現れ、「人間の運は車の輪の如く、輪廻の波のままに廻るものだ」と云う。巫女の目には高貴な女性が破れた車に乗り、泣いている姿が見える。
女性は六条御息所の怨霊と名乗り、「昔は華やかな身であったが、今は朝顔の露のごとく消えやすい身。その恨みを晴らすためにここまで来た」と、葵上に打ちかかろうとする。
巫女が止めるのも聞かず「生きていれば、源氏の君と懇ろにするであろう。私は葉末の露と消えてしまうも恨めしい。」と、葵上をさらうかの様に見えて姿を消す。
臣下は従者(間狂言)に命じて、横川の小聖(ワキ)を呼ぶ。
小聖が祈祷を始めると、御息所は鬼女(後シテ)となって現れ、小聖と争う。
「行者よ、早く帰り給え。」と云う鬼女に小聖は不動の呪文を唱えると、不動明王を中心とした五大尊明王の威力ある仏法の声を聞いた御息所の霊は、「もうこれまで。二度と参らず」と心も和らぎ、成仏の身となって消え去る。

盆山(ぼんざん)  大蔵流狂言

 盆山(盆の上に石や砂などで風影をかたどった置物で、箱庭のようなもの)をたくさん持っている人に、いくら頼んでも一つもくれないので、男(シテ)はこっそり盗みにやってきます。
垣根を破って侵入し、たくさん置いてある盆山を物色しているところを見つかり、男はとっさのことで盆山の陰に隠れます。
盗人が顔見知りだと気づいた主人は、さんざんになぶってやろうと犬だ猿だといいます。盗人はその都度真剣に鳴き真似をします。
次に鯛だといわれ、開いた扇で背中に立ててひれの真似をします。また鯛の鳴き声を聞かれ、男は困りつい「タイタイ」と鳴きながら逃げ込みます。
主人は腹を立て、男を追い込み掛けてゆきます。