「ごめんなさあ−い、遅れましたあ」息をはずませて美穂が入って未た。彼女は時代の電脳職とも言うべく企業向けのデータ作成や操作アドバイスを生業としていた。今日も遠方まで出向き、飲み込みの悪いオジサン達を教育して来たのであった。
「美穂、あんた遅いわよ。まあ仕事だから仕方ないけど。みんなもう帰ろうかって言ってたのよ」
年長の海子は少しご機嫌ななめである〔今宵は某青年部の女性会員会議の日であったのだ。
この女性会員会議というのは、その育年部の会長のすすめで、月に一度女性会員どうしが親睦を深める為に行われている食事会なのである。
この親睦会を通じて、もはや姉妹関係にまで成長した彼女達は総勢五名。海子がお姉さん、徹子が次女(通称傲子姉さん)、三女がルカ、四女が美春、そして末っ子美穂と、各々の役どころが決まっており、末っ子を怒るのはいつも長女の務めであった。
「本当にごめんなさい。お姉さん、ま一杯どうぞ。あらっ、空だわ、すぐ熱燗頼むわね」美穂が呼び鈴に手を伸ばす。
「三本ね、すぐなくなるから。あなた何か食べた?何か頼んだら?」
怒ってもやはり妹が心配な心優しい海子である。
会食場所は毎回素敵な所を探して“味の探訪”をしようと意気込んでいたのだが、今回も知らない所に行くのがおっくうになり、結局いつもの居酒屋YOROFALLSに落ち着いていた。
美春が頬杖をつきなが言った。
「このキムチ鍋、あまり美味しくない。この間の馳川さん所のカニ食ベる会の方が良かったなあ」
「また呼んでもらおうよ。何せこちらはネタ握ってるんだから。あははははは」横からルカがイタズラっぼく笑う。
「ルカ姉さんも人が悪い、ネタ握ってるなんて。ネタ握んのはツっちゃん(青年部メンバーの某お寿司やさんのことらしい)だけにしといて」と言いながら、そのネタを暴露したのは当の美春である。彼女の冗談に座が静まった。
十秒の沈黙があり、慌てて美穂が機転を利かす。
「ネタはネタでも楽しいネタもっと教えて。私、この会のおもしろい話のファンで、いつもお姉さん達の話、楽しみにしてんの」
彼女達の話題はまず身辺の日常話から始まり、また意識して青年部に関する話題も交えるよう心掛けていた。しかし青年部の話といってもカタイ話は好きになれず、いつも「そういえば、この間誰それがこんな事言うとった」に流れてしまい、それもおバカな話の伝聞にもっとも盛り上がりを見せていたのであった。
私の出番かなといった具合に、徹子が姿勢を正してしゃべり出した。
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