幸保が未たりて法螺を吹く 第二章 バル・拒食…間違い「巨食」

 

宇宙忍者

「それじやあねえ、“ばるたせいじ”っていう変わった名前の人がいるって話、聞いたことある?」
「バルタン星人?そんな人おらんでしょう」困った顔をして美穂が答えた。
「うん。これ、この間のゲティング・クローサー委員会の後でここ来た時に聞いたんやけど、うちの男どもお酒飲み出すといつもこの話になるのよ。誰のことかはわからんのやけど、その人の友人にその“ばるたせいじ”ってのがおるんやて。そんならどんな字書くんやって聞いたら、考え込んでしまったんやて」
「プホッ。徹子姉さん、いきなり変な話せんといて、もお。そんな名前の人、おるわけないやん」徹子の話に、横に座ってナンピサを食べていたルカが吹き出した。
「でもね、その人しばらく考えて、“ばるた”の“ぱ”は波、“る”は留、“た”は田んぼの田とか答えたんやて」
「あっはっはっは、えらいこじつけねえ」海子が笑い出した。
「それにね、その人がそのバルタン星人に東京で久々に会った時『よお!ばるたっ』って言ったら、相手が両手ではさみの格好して『フォッ、フォッ、フォッ、』って言うたんやて」
「わあ−っはっはっはっは」
「ギヤハハハハハ」
「うそ、うそ」
「イヒー、イヒー」
 爆笑と同時に四人とも引っ繰り返った。
 徹子はその光景にニンマリし、話を続けるのであった。

巨食症

「また別の話なんやけど、その人大食漢なんやて。これは本当で、いつも割勘負けするって男どもこぼしてるんやけど。で、自他共に認める事やもんで、その本人も自ら食べ物の話をよくするんやて。いつやらは何何をどれくらい食べたっていう調子でね。それでね、ある焼き鳥屋でいつものように大きな話をしていて『この間なんか、ご飯一升食べましたよ』って言ったら隣の席のよその人が『うそつけ、この野郎!』って思わずどなったんだって」
「わあ−っはっはっはっは」
「ギヤハハハハハ」
「うそ、うそ」
「イヒー、イヒー」
 四人とも転がり笑い続けている。
「最近ではパン一斤食べて、その後にカップヌードル食べたんやて」
「わあ−っはっはっはっは」
「ギヤハハハハハ」「うそ、うそ」
「イヒ、イヒ、ちょっとやめて、えらい、えらい」
 腹を押さえながらも、ようやく四人が呼吸を整え、テープルの上に顔を出した。それでも海子はまだ肩で息をし、ルカはあごをさすり、美春は落ち着く為に飲み物を求め辺りをキョロキョロし、美穂はまだ格別の笑顔で震え続けている。
「その人の話まだあるんよ」徹子もおしぼりで汗をふきながら、またしゃべり始めた。

 

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