介抱
「その人の東京の友人の話なんだって。まずこの“友人”ってのがいつも径しいらしいんやけど。で、その友人がある夜飲んで帰る時に、うずくまってる人を見つけたんやて。それで冬やったもんで風邪ひかんか心配やったんやて。よく見ると顔色も青いもんで、ますます心配になって『大丈夫ですか?』って聞いても返事がないんやって。で、何遍も『大丈夫か?大丈夫か?』って肩揺すっても答えがないもんだから、これは大変と家に連れて帰って寝かせてやったんやて。でね、それから朝になって、その人も酔いがさめて様子を見に行ったら、布団の中にコルゲンコーワのケロちやん人形が寝とったんやて」
「わあ−っはっはっはっは」
「ギヤハハハハハ」
「うはははははは」
「イヒー、イヒー」
またしても四人、一斉に引っ繰り返る。
「そんなん、ウソ、ウソ」
「そんな人、おるはずないやん」
テープルの下から海子と美春の声がする。ルカと美穂は各々あごとおなかをかかえ震え続けている。
徹子はコッブのビールをグイッと飲み干し、我を落ち着かせてから、再スタートといわんばかりに語り出した。
太っ腹
「また、その人ある時は大胆な行動をとるんやて。どこかの青年会の旅行で会のお金、百万円使ったんやて。トンカツさん怒ってた」
「えっ、どういう事?」海子が反応した。
「その会、毎年親睦旅行してたのね。それでいつもやと五十万位の予算を充てていたの。ところがその人が旅行の担当して、気が大きいものだから、大名旅行になっちゃったのね。清算してみると何と百万円。それだけ会のお金使ったものだから翌年の会運営に響いて、スタート時には会のお金が全く無かったそうなの。そしてそのとばっちりを受けたのが翌年会長のトンカツさんだったの」
「あっ、その話なら私も聞いた事ある。でもさっきから言う“その人”って誰の事なん?」
少し冷静さを取り戻したルカが言った。
「それがわからないのよ。いつも当たり前みたいに皆話してるし、内答がおもしろいから、名前が出て来てもそっちに気を取られてて」と徹子が申し訳なさそうに言うと美春も続いた。
「それに男ども愛称で互いを呼び合ったりするから、誰の事かわからない事が多いしねえ」
「ほんとに誰なんやろねえ、そんなおもしろい人」
自分のコッブにビールを注ぎながら、海子がつぷやいた。
皆、笑ってばかりで食べてないのに気づき、各々目の前のつまみに手をつけた。
しかし一息入れる間も無く、
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