第24回神宮奉納伊勢薪能 「演目解説」


能  「三 輪(みわ)」

 三輪の山蔭に住む玄賓僧都(ワキ)の処へ、毎日樒を持ち、水を汲んで来る女性が居る。僧都はその女性に名を尋ねてみようと思う。

 いつものように庵を訪れた女性(前シテ)は、僧都に「秋も夜寒くなったので上人の衣を賜りたい」と云う。僧都は衣を渡し、住処を尋ねると女性は「我が庵は三輪の山本恋しくは」と三輪明神の和歌を口ずさみ「杉立てる門をしるべに尋ねよ」と云って姿を消す。

 所の者(間狂言)が、三輪の山杉(作物)を拝みにいくと、僧都の衣がかかっているので、不思議に思い、僧都のもとに来て語る。

 僧都は杉の立った社を探すが見つからず、二本並んで立った杉があった。そこに女に与えた衣がかかっているのを見つける。衣の褄に金色の字で「三つの輪は清く浄きぞ唐衣、くると思ふな取ると思はじ」と和歌がしたためてあった。やがて杉の木陰から神の声が聞こえるので、僧都は有難く思い、感涙にむせぶと、「私の罪を助けて下さい」と神(後シテ)は女の姿で現れ、古い大和の夫婦の事を述べる。

  僧都はこの話を聞いて、神仏を崇める心を強くおこす。神は「神代の話をして上人をなぐさめよう」と天の岩戸の神遊びの様子を見せ「三輪の神と伊勢の神は一心同体である」と語り、やがて夜も明け、夢はさめてゆく。

 


狂言 「棒縛(ぼうしばり)」

 いつも留守中に酒を盗み呑みされて困る主人は、一計を案じ太郎冠者を後手に、次郎冠者を棒に、各々縛りつけて出掛けます。

 呑めないと余計に呑みたく成るのが人間の心理、縛られた両名の者は尚更酒が呑みたくなり、工夫を凝らして酒蔵の戸を開け、酒盛を始めます。

 呑めや歌えの最中に主人が帰宅。それとも知らずに主人をそしる両名の者。

 棒に縛られての舞や謡い等の所見も多く、海外公演の節には必ずと言って良い程上演される、小名狂言の代表曲で、人間の心理と欲望が見事に表現され、後に歌舞伎舞踊にも脚色された名曲です。