三重県伊勢市の医療法人なかの歯科院長のブログです

ホワイトニングの間違ったTV放送について

今朝、TBS「朝ズバ!」で、新しい歯のホワイトニング法として、歯をまったく削ることなく表面に白いシェル(薄さ0.3mm)を貼り付ける方法が紹介されました。
それについて、一言、二言、三言・・・(笑)

まず、歯にセラミックス等の白いシェルを貼り付ける治療は従来から有る方法で、決して新しい治療法ではありません。また、それは「ホワイトニング」ではなく、「ラミネートベニア」(補綴治療)に属する治療法です。
上は、その歯科医院HPで掲載されている写真です。
皆さんはこれを見てどう思われますか? 何か違和感を感じませんか??
私の視点:
①写真を見て治療法云々の前に、全ての症例の治療前、治療後が同じ条件で撮影されていない(治療前は口の中全体を見やすくする鉤がかけられているが、治療後はかけられていない)。ラミネートベニア修復で我々が最も重要視するのは、歯のはえ際の形態、色、歯肉との親和性です。この写真では、それらに問題があるので目立たないよう意図的に撮っていると思われても仕方ありません。また、咬んでいる位置が治療前と治療後で異なる症例がありますが、通常、我々歯科医師がこのような異なった位置で治療前後の比較をすることはあり得ず、その意図が全く理解できません。そのような基礎的なことさえできていない歯科医にまともな治療はあり得るのでしょうか?

②天然の歯(治療前)と貼り付けた歯(治療後)とでは、歯の唇側の出具合が異なるのが分かると思います(削らずに貼り付けただけでは、当然、歯は外側に膨らみます)。私の目には、口唇が前に押されて大変窮屈そうに見えます。特に上から2、3、6番目の症例は、もともと前歯が捻転し、歯が外側に出っぱっている部分があるのに、そこを全く削らずに貼り付けたとしたら、たとえ0.3mmとはいえ、さらに前に出ているはずです。もしその部分に合わせて周りの歯も出っ張らせたとしたら、全体的には相当前に出っ張っていることになります。その出っ張りは、発音障害や審美障害を起こすだけでなく、食物の正常な流れを妨げ、口呼吸になりやすくし、虫歯や歯周病を誘発します。
 上から4番目の症例にしても、厚さ0.3mmでこんなに出っ張ってしまうのでしょうか? 治療前の自然な歯の形態に比べ、治療後は異常なまでの歯の出っ張り(傾斜)、歯の形態の悪さが大変目立ちます。

③上から2番目の症例は、咬み合わせが病的であることが疑われ、単に審美治療を行うのではなく、咬み合わせの正しい位置(顎位)、顎の動きを慎重に診査して治療にあたる必要があります。もちろん数回の来院でそれが可能なはずはありません。また、左右上顎前から2番目の歯は、歯肉の位置(高さ)も変わってますので、抜歯や歯肉の手術を行っていないとしたら、歯肉を覆うようにシェルを貼り付けていると思われます。果たしてその部位の清掃性はどうなのでしょう?
それとも下写真のような義歯のように取り外すタイプでしょうか??

④この歯科医院は、「付け八重歯」も勧めています・・・
 当ブログで既に今年2月に述べておりますが(ご参照に)、「付け八重歯」は問題点が多く考えられます。間違ったコンセプトの治療を受けることにより、皆さまの健康を害する恐れがあることを是非、ご理解下さい!

下の写真は、私が師事する奈良県生駒市ご開業、大阪SJCD顧問 木原敏裕先生の症例。
真の審美性(自然な歯の形態、色)と機能性(これで咬み合わせ治療を行っております)というものがご理解いただけると思います。
前述の医院の症例は残念ながら、10年後には歯は虫歯、歯周炎、さらには顎関節症で危険な状況、下の症例は10年後も治療直後と変わっていないでしょう。
これこそが我々歯科医の目指すべきところであり、患者様に本当に喜んでいただける治療だと思います。

写真上:治療前  写真下:治療後

マスコミによる間違った報道、浅はかな報道は、これまで何度も問題となっております。
安い、短期の治療といったキャッチコピーに振り回され、安易に間違った治療を選択し取り返しのつかないことにならぬよう、皆さま、くれぐれもご注意ください!